咳は誰にでも起こる身近な症状ですが、長引く場合や、他の症状を伴う場合には、原因をきちんと確認することが大切です。この記事では、急いで受診したい危険なサインから、咳が続く期間の考え方、考えられる原因、受診先の選び方、医療機関で行われる検査までを順番に説明します。
咳の症状だけで病名を確定することはできません。強い呼吸困難や意識の異常などがある場合は、この記事を読み進めるよりも先に119番を検討してください。
咳と一緒に現れたら急いで受診したいサイン
咳そのものは軽い症状で終わることも多くありますが、一緒に現れる症状によっては、すぐに医療機関へ連絡したほうがよい場合があります。まずは、緊急性の高いサインから確認しましょう。
119番を検討する症状
次のような症状がある場合は、通常の受診や相談ではなく、119番を検討してください。
- 息が非常に苦しい
- 会話をするのが難しいほど呼吸が苦しい
- 意識がもうろうとしている、反応がおかしい
- 唇や顔色が青紫色になっている、または明らかに悪い
- 強い胸の痛みを伴う
- 状態が急速に悪化している
- 咳とともに大量の血が出る(喀血)
これらは、命に関わる状態が背景にある可能性があるサインです。ためらわず119番へ連絡してください。
東京都内にお住まいで、「これは救急車を呼ぶべき状態なのか」と判断に迷う場合は、東京消防庁の救急相談センター「#7119」に相談できます。ただし、上記のような明らかな緊急症状がある場合は、#7119への相談よりも119番を優先してください。
早めに相談したい症状
次のような症状がある場合は、119番ほどの緊急性はなくても、症状が軽く見えても、早めの相談を検討してください。
- 血の混じった痰(血痰)が出る
- 発熱が続いている
- 咳や息苦しさが悪化してきている
- 胸の痛み、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴、体重減少などを伴う
- 高齢の方、妊娠中の方、基礎疾患がある方で、咳が続いている
- 咳のために睡眠や仕事など日常生活に大きな支障が出ている
- 咳が長引いている、または何度も繰り返している
なお、血痰が出たからといって、必ずしも肺がんが原因とは限りません。血痰の量や呼吸の状態などによって緊急性は異なりますので、自己判断で様子を見続けず、医療機関で確認してもらうことが大切です。
咳が続く期間で原因の考え方が変わる
咳は、どのくらいの期間続いているかによって、考えられる原因の傾向が変わってきます。
- 3週間未満の咳を「急性咳嗽」と呼びます。風邪などの感染症が原因であることが多いとされています。
- 3週間以上8週間未満続く咳を「遷延性咳嗽」と呼びます。
- 8週間以上続く咳を「慢性咳嗽」と呼びます。
期間が長くなるほど、風邪などの感染症をきっかけに気道の炎症だけが残る「感染後咳嗽」に加えて、咳喘息、鼻や副鼻腔の病気、胃食道逆流症、薬の副作用による咳(薬剤性咳嗽)なども考えられるようになります。急性から遷延性の時期まではウイルスや細菌の感染症によるものが多く、慢性になるにつれて感染症以外の原因が多くなっていく傾向があります。
ただし、期間だけで咳の原因を断定することはできません。あくまで、原因を考えるうえでの一つの手がかりとして参考にしてください。期間が短くても、強い症状があれば受診が必要な場合があります。
長引く咳の主な原因
長引く咳の原因は一つとは限りません。ここでは、比較的よくみられる原因と、見逃したくない原因に分けて紹介します。いずれも、症状だけで自己診断することはできません。
風邪などの感染症と感染後咳嗽
風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、気管支炎、肺炎などの感染症は、咳の代表的な原因です。
感染そのものが治まったあとも、気道に炎症が残ることで咳だけが続く場合があります。これを感染後咳嗽と呼びます。発熱や全身の状態の悪化がある場合は、感染症そのものの評価が必要になることがあります。感染症の種類を、咳の症状だけで断定することはできません。
ぜんそく・咳ぜんそく・アレルギー関連
気管支ぜんそくや咳ぜんそくでは、夜間や早朝に咳が出やすい、冷たい空気や会話、運動などがきっかけで咳が誘発される、といった特徴がみられることがあります。
咳ぜんそくでは、明らかなゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴を伴わないこともあり、症状だけで咳ぜんそくと診断することはできません。必要に応じて呼吸機能などの検査で評価します。
鼻・胃食道逆流・薬剤が関係する咳
鼻水や鼻づまり、鼻水がのどに流れ込む後鼻漏によって、咳が続くことがあります。また、食事のあとや横になったときに咳が出やすい、胸やけがあるといった場合は、胃酸が逆流する胃食道逆流症が関係していることもあります。
血圧を下げる薬の一種であるACE阻害薬など、服用中の薬が原因で咳が出ることもあります(薬剤性咳嗽)。ただし、薬が原因かもしれないと感じても、自己判断で服用を中止せず、処方した医師に相談してください。
COPDや肺がん、結核、心不全など注意したい病気
喫煙歴があり、咳や痰、息切れが続いている場合は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)も考えられる原因の一つです。COPDについては、当院の別記事「COPDとは?症状・原因・検査・治療を医師がわかりやすく解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
血痰、体重減少、胸の痛みなどを伴う場合は、肺がんや肺結核なども鑑別の対象になります。また、咳とともに息切れがある、横になると苦しい、むくみがあるといった場合は、心不全など心臓の病気が関係している可能性もあります。必要に応じて、胸部X線検査などで確認します。
なお、肺がん検診は、基本的に自覚症状のない人を対象とした検診です。咳や血痰などの症状がすでにある方は、検診ではなく、診療として医療機関へ相談する必要があります。
咳は何科を受診すればよい?
咳が出たとき、どの診療科を受診すればよいか迷う方も多いと思います。ここでは受診先の考え方を整理します。
迷ったときは一般内科・呼吸器科へ
咳が主な症状で受診先に迷う場合は、一般内科または呼吸器科が相談先になります。一般内科では、咳以外の全身の状態もあわせて確認し、必要に応じてより専門的な診療へつなげます。
護国寺内科・循環器クリニックの公開サイトでは、一般内科と呼吸器科の両方で、咳を診療対象としています。
症状により耳鼻咽喉科・消化器内科・循環器内科へ
咳以外にどのような症状があるかによって、適した受診先が変わることもあります。
- 鼻水、鼻づまり、後鼻漏などが中心の場合:耳鼻咽喉科
- 胸やけ、胃酸の逆流感などが中心の場合:消化器内科
- 息切れ、むくみ、胸の痛み、動悸を伴う場合:循環器内科
- 明らかな緊急症状がある場合:119番
- 東京都内で救急車を呼ぶべきか判断に迷う場合:#7119
咳の原因によっては、当院だけですべての検査・治療が完結するとは限りません。専門的な検査や治療が必要と判断した場合は、連携している医療機関へご紹介する場合があります。
医療機関ではどのように原因を調べる?
咳の原因を調べるために、医療機関では次のような問診・診察・検査を行います。あくまで一般的な流れであり、実際の内容は症状や経過によって異なります。
問診・診察で確認すること
問診や診察では、主に次のような内容を確認します。
- 咳が始まった時期と、続いている期間
- 乾いた咳か、痰が絡む咳か
- 痰の色、量、血が混じっているかどうか
- 発熱、息切れ、胸の痛み、喘鳴の有無
- 夜間・早朝、食後など、咳が出やすい時間帯
- 喫煙歴
- 職業や生活環境
- 服用中の薬
- 周囲の感染状況
- 過去にかかった病気(既往歴)
問診や診察だけで、必ず原因が分かるとは限りません。必要に応じて、以下のような検査を組み合わせて確認します。
必要に応じて行われる検査
咳の原因を調べるために、一般的には次のような検査が行われることがあります。
- 胸部X線検査
- 血液検査
- インフルエンザ・新型コロナウイルスなどの感染症検査
- 呼吸機能検査
- 必要に応じた専門的な検査や、他院への紹介
護国寺内科・循環器クリニックでは、胸部レントゲン、血液検査、インフルエンザ・新型コロナウイルス抗原検査、溶連菌検査に加えて、ぜんそくが疑われる場合には必要に応じて呼吸機能検査を行っています。
これらの検査は、すべての患者さんに一律に行われるものではなく、症状や経過に応じて必要な検査が選択されます。
咳の治療と日常生活での注意点
咳への対応は、原因によって異なります。ここでは、治療の考え方と、受診までにできることを紹介します。
治療は咳の原因によって異なる
咳の治療は、感染症、ぜんそく、鼻や副鼻腔の病気、胃食道逆流症、薬剤性など、原因によって対応が異なります。咳止めだけでなく、原因そのものへの対応が必要になる場合もあります。
すべての咳に抗菌薬や吸入薬が一律に必要というわけではありません。治療方法や薬剤は、医師が症状や検査結果に応じて判断します。治療の効果には個人差があり、一定の効果を保証するものではありません。
受診までにできることと市販薬の注意
受診までの間、次のようなことに気をつけると、体への負担を減らせる場合があります。
- 喫煙、受動喫煙、強い香り、粉じんなどの刺激をできるだけ避ける
- 咳が出る期間、時間帯、痰の状態、発熱の有無などを記録しておく
- マスクの着用、ティッシュや袖で口や鼻を覆うなど、咳エチケットを心がける
- お薬手帳や、服用している薬の情報を準備しておく
市販薬を使用する場合は、用法・用量を必ず守ってください。持病がある方や、他に服用している薬がある方は、使用前に医師・薬剤師・登録販売者に相談することをおすすめします。
「短期間であれば市販の咳止めで様子を見てよい」と一律に判断することはできません。咳の原因によっては、市販薬だけでは十分に改善しない場合があります。咳が長引く、悪化する、呼吸困難や血痰などを伴う場合は、市販薬だけで様子を見続けず、医療機関へ相談してください。また、処方された薬を自己判断で中止しないようにしてください。
文京区・護国寺で長引く咳にお悩みの方へ
当院で相談できる咳の症状と検査
護国寺内科・循環器クリニックでは、一般内科で発熱、咳、のどの痛みなどを診療しています。また、呼吸器科のページでは、長引く咳、痰、夜間・早朝の咳、ぜんそく、咳ぜんそく、COPDなどを診療案内としてご紹介しています。
症状や経過に応じて、胸部レントゲン、血液検査、感染症検査、呼吸機能検査などを行います。専門的な検査や治療が必要と判断した場合は、連携している医療機関へご紹介します。
受診時に伝えること・準備するとよい情報
受診の際は、次のような情報を医師に伝えていただくと、診察がスムーズに進みます。
- 咳が始まった時期
- 痰、発熱、息切れ、胸の痛みの有無
- 咳が出やすい時間帯やきっかけ
- 喫煙歴
- 服用中の薬
- 過去の健診結果や検査結果
- お薬手帳
発熱や感染症を疑う症状がある場合は、受診前にWeb予約または電話でご相談ください。症状や混雑状況により、別室での対応や時間調整を行う場合があります。
咳に関するよくある質問
熱がなくても咳が続けば受診したほうがよいですか?
咳ぜんそく、鼻や副鼻腔の病気、胃食道逆流症、薬剤性の咳、COPDなど、発熱を伴わない原因も少なくありません。咳が長引く、悪化する、繰り返す、日常生活に支障がある場合は、一般内科または呼吸器科へ相談してください。発熱がないことだけで、重大な病気の可能性を否定することはできません。
市販の咳止めを使ってもよいですか?
使用する場合は用法・用量を守り、持病や他の服用薬がある場合は事前に医師・薬剤師・登録販売者へご相談ください。咳が長引く、悪化する、呼吸困難や血痰などを伴う場合は、市販薬だけで様子を見続けず医療機関へ相談してください。
まとめ
- 強い呼吸困難や意識の異常などの明らかな緊急症状がある場合は、119番を検討してください
- 東京都内で救急車を呼ぶべきか判断に迷う場合は、#7119に相談できます
- 明らかな緊急症状がある場合は、#7119よりも119番を優先してください
- 咳は3週間未満、3週間以上8週間未満、8週間以上で、原因の考え方が変わります
- 長引く咳には、感染症以外の原因もあります
- 受診先に迷う場合は、一般内科・呼吸器科へ相談してください
- 文京区・護国寺周辺で咳が続く場合は、護国寺内科・循環器クリニックへご相談いただけます
- 発熱や感染症を疑う症状がある場合は、受診前にWeb予約または電話でご相談ください
