「階段を上ると息が切れる」「前より少し動いただけで苦しくなる」。息切れは多くの方が経験する症状ですが、原因は心臓や肺の病気、貧血など、体のさまざまなところにあります。症状だけで病名を決めることはできません。
この記事では、息切れが起こる状況や一緒に出ている症状から考えられる原因の方向性と、救急車を呼ぶべきサイン、受診する診療科の目安を整理します。
急に息が苦しくなった、胸の痛みが続いている、意識がもうろうとしているといった場合は、この記事を読み進めるよりも先に119番へ連絡してください。受診を急ぐ目安は、次の「息切れで受診を急ぐサイン|119番・医療機関へ相談する目安」でまとめています。
息切れで受診を急ぐサイン|119番・医療機関へ相談する目安
息切れには、119番へ連絡した方がよい症状、速やかに医療機関へ相談したい症状、続く場合に受診を検討したい症状があります。まず、いまの症状がどれに当たるかを確認しましょう。
救急車を呼ぶ目安となる症状
厚生労働省が消防庁の資料をもとにまとめた「こんな時は迷わず119へ」では、大人の次のような症状を、救急車を呼ぶ目安として示しています。
- 急な息切れ、呼吸困難
- 胸の中央が締めつけられるような、または圧迫されるような痛みが2〜3分続く
- 胸や背中の突然の激しい痛み
- 顔色が明らかに悪い
- 意識がない、または意識がおかしい(もうろうとしている)
突然始まる息切れは、肺の血管に血のかたまりが詰まる「肺血栓塞栓症」や、肺の外側の空間に空気がたまり肺が広がりにくくなる「気胸」でもみられることがあります。どちらも胸の痛みを伴うことがあります。
胸の痛みを伴う場合の危険なサインは、「胸痛とは?考えられる原因と受診の目安」の記事でも詳しく解説しています。
速やかに医療機関へ相談したい息切れ
喘息と診断されている方で、発作のときに使う即効性の気管支拡張薬(吸入薬)を何度か使っても息苦しさが改善しない場合は、速やかに医療機関を受診してください。日本呼吸器学会も、発作時の吸入を繰り返しても改善しないときは速やかに受診するよう案内しています。
なお、急に息が苦しくなった場合は、前の項目の「救急車を呼ぶ目安となる症状」に当てはまります。119番へ連絡してください。
症状が続く・繰り返す場合は受診を検討したい息切れ
急を要する症状ではなくても、次のような息切れが続く・繰り返す場合は、医療機関で原因を確認することを検討しましょう。
- 以前より軽い動作で息が切れるようになった
- 階段や坂道での息切れが続いている
- 横になると息苦しい、夜中に息苦しくて目が覚める
- 足のむくみや、短い期間での体重の増加を伴う
- 咳や痰、発熱を伴う
日本呼吸器学会は、坂道や階段での息切れの背景に病気が隠れていることがあるとして、医療機関の受診をすすめています。国立循環器病研究センターも、息切れと足のむくみは心不全でよくみられる初期の症状であるとして、受診をすすめています。
これらの症状は、心臓や肺の病気、貧血など、さまざまな原因で起こります。年齢や運動不足のせいと決めつけず、原因を確かめておくことが大切です。
判断に迷うときの相談先
救急車を呼ぶべきか、すぐに受診すべきか迷うときは、救急安心センター事業(#7119)に電話で相談できる地域があります。医師や看護師などの専門家が相談に応じ、緊急性が高いと判断された場合は、119番通報への転送など、緊急出動につながる対応が行われます。
東京都では、東京消防庁救急相談センターが#7119を受け付けています。ただし、「救急車を呼ぶ目安となる症状」に当てはまる場合は、相談よりも119番への連絡を優先してください。
息切れとは?「息が切れる」「息苦しい」の感じ方
息切れは、医学的には「呼吸困難」とも呼ばれます。まず、息切れがどのような症状なのかを整理しておきましょう。
息切れ(呼吸困難)は本人が感じる呼吸の不快感
息切れは、呼吸をするときに感じる不快な感覚です。本人にしかわからない主観的な症状で、「空気が足りない」「胸が締めつけられる」「息をするのに力がいる」など、感じ方は人によって異なります。
息切れがあるからといって、必ずしも体の酸素が足りなくなっているとは限りません。国立長寿医療研究センターは、息苦しさ(呼吸困難)と、酸素を十分に取り込めない状態(呼吸不全)は別のものだと説明しています。息苦しさがあっても呼吸不全ではないことが多い一方で、呼吸不全があっても息苦しさを感じにくいこともあります。
そのため、息苦しさの強さだけで重症かどうかを判断せず、どんなときに起こるのか、ほかにどんな症状があるのかをあわせて確認することが大切です。
運動後の自然な息切れと、受診を考えたい息切れ
激しい運動のあとなど、誰でも息が切れる場面はあります。気にかけたいのは、息切れの起こり方に「以前との変化」がある場合です。
- 以前は平気だった動作で息が切れるようになった
- 息切れが少しずつ強くなっている
こうした変化は、年齢や運動不足だけが理由とは限りません。どのような状況で息切れが起こるのかは、次の項目で整理しています。
どんなときに息切れするか|状況から考える
同じ息切れでも、起こる状況によって考えられる原因の方向性が変わります。ここでは代表的な状況ごとに整理します。病名を決めるためではなく、医療機関で症状を伝えるときの目安としてご覧ください。
階段や坂道で息切れする
体を動かしたときの息切れは、よく相談される症状です。日本呼吸器学会は、坂道や階段で息切れする場合に多い原因として、肺の病気(COPD、間質性肺炎)、心臓の病気(心不全)、血液の病気(貧血)を挙げています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、主にたばこの煙を長年吸い込むことで起こる肺の病気です。歩いたときや坂道・階段での息切れ、長引く咳や痰がみられます。間質性肺炎は、初めは症状がないこともありますが、進むと動いたときの息切れや、痰を伴わない咳がみられます。
心不全は、心臓のポンプとしての働きが弱まり、息切れやむくみなどが現れる状態です。初期には、体を動かしたときの息切れとして現れることがあります。
少し動いただけでも息切れする
以前より軽い日常動作で息切れするようになった場合は、原因を調べることを検討しましょう。
原因は心臓・肺・貧血などさまざまで、この症状だけで病気の種類や重さを判断することはできません。どのような動作で、いつごろから息切れを感じるようになったのかを、受診のときに伝えられるようにしておくと役立ちます。
横になると苦しい・夜中に苦しくて目が覚める
横になると息苦しく、体を起こすと楽になる状態を「起坐呼吸(きざこきゅう)」といいます。また、眠っている途中に息苦しさで目が覚めることを「夜間発作性呼吸困難」といいます。どちらも心不全でみられることがある症状です。
一方で、喘息でも、咳や息苦しさが夜間や早朝に出やすいことが知られています。夜間の息苦しさは心臓と肺のどちらの病気でも起こりうるため、症状が続く場合は医療機関で原因を確認しましょう。
突然息が苦しくなった
日本呼吸器学会は、急に息が苦しくなる原因として、喘息の発作、肺血栓塞栓症、気胸、心臓の病気による心不全などを挙げています。
急な息切れ・呼吸困難は、救急車を呼ぶ目安に当たります。前述の「救急車を呼ぶ目安となる症状」を確認し、119番へ連絡してください。
一緒に出ている症状から考える
息切れと一緒に出ている症状は、原因を考えるうえで大切な手がかりです。気になる症状がある方は、当てはまる項目を確認してください。病気の詳しい説明は、それぞれの関連記事で解説しています。
動悸を伴う
動悸(ドキドキする、脈が乱れる感じ)と息切れが一緒に起こる場合は、不整脈が関係していることがあります。国立循環器病研究センターは、脈が速くなるタイプの不整脈では動悸や息切れが、脈が遅くなるタイプでは息切れやめまいが出ることがあると説明しています。めまいや失神を伴うこともあります。
また、貧血でも動悸や息切れがみられることがあります。動悸が主な症状の方は、「動悸の受診の目安」の記事もあわせてご覧ください。
胸の痛み・圧迫感を伴う
息切れに胸の痛みや圧迫感を伴う場合は、心臓の血管が狭くなったり詰まったりする虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)や、肺血栓塞栓症、気胸などの可能性があります。
胸の中央の締めつけや圧迫感が続く場合や、突然の激しい痛みがある場合は、救急車を呼ぶ目安に当てはまります。119番へ連絡してください。
足のむくみ・急な体重増加を伴う
息切れに足のむくみや体重の増加を伴う場合は、心不全のサインの可能性があります。心不全では体に余分な水分がたまりやすくなり、すねや足の甲のむくみ、短い期間での体重の増加がみられることがあります。
また、肺血栓塞栓症では、脚のむくみや痛みが息切れより先に出ることがあります。脚のむくみや痛みのあとに急に息苦しくなった場合は、119番へ連絡してください。
むくみが主な症状の方は、「むくみの原因と受診の目安」の記事も参考にしてください。
咳・痰・発熱、ゼーゼー・ヒューヒューを伴う
咳・痰・発熱を伴う息切れでは、肺炎などの呼吸器の感染症が考えられます。高齢の方では典型的な症状が出にくく、「いつもと様子が違う」「食欲がない」といったことで気づかれる場合もあります。
息苦しさとともにゼーゼー・ヒューヒューという音がする場合は、喘息の可能性があります。
喫煙歴があり、咳や痰が長く続いている場合は、COPDも考えられます。咳が主な症状の方は、「長引く咳の原因と受診先」の記事もご覧ください。
疲れやすい・顔色が悪い
疲れやすさや顔色の悪さを伴う息切れでは、貧血の可能性があります。厚生労働省の情報サイトでは、貧血の症状として動悸、息切れ、顔色の悪さ、疲労感を挙げています。ただし、貧血があっても症状が出ないこともあります。
貧血は、原因によって必要な検査や治療が異なります。「貧血の症状・原因・検査」の記事で詳しく解説しています。
息切れの主な原因|整理
ここまでに出てきた主な病気を、原因の系統ごとにまとめます。どの症状が手がかりになるかは、上の各項目をご覧ください。
- 心臓:心不全、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、不整脈、弁膜症
- 肺・気道:COPD、喘息、肺炎、間質性肺炎、気胸、肺血栓塞栓症
- 血液:貧血
- その他:神経や筋肉の病気、心理的な要因など
弁膜症は、心臓の弁に異常が生じる病気で、進行すると心不全につながり息切れなどの症状がみられることがあります。
息切れは心臓の病気だけで起こるものではなく、肺の病気や貧血でも起こります。日本呼吸器学会は、息切れの原因として神経や筋肉の病気や精神的な要因も挙げています。ただし、心理的な要因は、体の病気がないかを確認したうえで考えることが大切です。
息切れは何科を受診する?
息切れの原因は幅広いため、受診先に迷う方も少なくありません。一緒に出ている症状を目安に選びましょう。
どの科か迷うときは内科へ
どの科に行けばよいか迷う場合は、まず内科で相談しましょう。内科では問診や診察を通じて全身の状態を確認し、必要に応じて専門の診療科や医療機関へつなぎます。
当院の一般内科でも、どの科を受診すべきか迷う症状のご相談を受け付けています。
動悸・胸の痛み・むくみ・横になると苦しい場合は循環器内科
心臓の病気を疑わせる症状を伴う場合は、循環器内科が受診先の目安です。循環器内科は、心臓や血管の病気を専門に診る診療科です。
当院の循環器内科では、心臓や血管の病気を診療しています。
咳・痰・ゼーゼー・喫煙歴がある場合は呼吸器内科
肺や気道の病気を疑わせる症状を伴う場合は、呼吸器内科が受診先の目安です。階段や坂道での息切れなど、呼吸器症状が続く場合は、呼吸器内科のある医療機関への受診を検討しましょう。
当院の呼吸器科でも、咳や息切れ、ぜんそくなど呼吸の症状を診療しています。
緊急の症状があるときは119番
急な息切れや呼吸困難、胸の締めつけが続くなど、救急車を呼ぶ目安に当てはまる場合は、診療科を選ぶよりも先に119番へ連絡してください。
医療機関で行う主な検査
息切れの原因を調べるときは、まず問診で次のようなことを確認します。
- いつごろから息切れがあるか
- どんな動作や状況で息切れするか
- 一緒に出ている症状(動悸、胸の痛み、むくみ、咳・痰、発熱など)
- 喫煙歴
- 持病や、服用している薬
そのうえで、症状に応じて胸部X線(レントゲン)、心電図、血液検査、心エコー(心臓超音波検査)、呼吸機能検査、胸部CTなどを組み合わせます。一般的な医療機関で行われる検査の例で、すべての検査を全員に行うわけではありません。
心電図と心エコーの違いは、「心電図・心エコー検査でわかること」の記事で詳しく解説しています。
護国寺内科・循環器クリニックで相談できること
当院では、一般内科・循環器内科・呼吸器科の診療を行っており、息切れのご相談も受け付けています。
当院で行っている検査
当院では、症状に応じて次のような検査を行っています。
- 心電図
- 心エコー(心臓超音波検査)
- 胸部レントゲン
- ホルター心電図(日常生活の中で心電図を記録する検査)
- 血液検査
どの検査が必要かは、問診・診察のうえで医師が判断します。
専門的な検査・入院が必要な場合
より詳しい検査や入院が必要と判断した場合は、必要に応じて提携医療機関と連携し、精密検査や入院治療につなげます。検査や入院のあとは情報を共有し、当院で引き続き診療を行います。
文京区・護国寺で息切れが気になる方へ
院長は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本救急医学会救急科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医の資格をもち、総合内科・救急・循環器内科の診療に携わってきました。息切れのように原因が幅広い症状も、全身の状態をふまえて確認します。
「何科に行けばよいかわからない」という症状も含めて、お気軽にご相談ください。
護国寺内科・循環器クリニック
東京都文京区音羽2丁目5番地11号 ソフィア音羽102号
TEL:03-6304-1045/WEB予約
息切れについてよくある質問
何もしていないのに息切れするのはストレスが原因ですか?
日本呼吸器学会は、息切れの原因として心臓や肺、血液の病気のほか、精神的な要因も挙げています。ただ、息切れは体のさまざまな病気でも起こります。ストレスのせいと決めつけず、まず心臓や肺、貧血など体の原因がないかを確認することが大切です。急に息が苦しくなった場合は、119番へ連絡してください。
少し歩くと息切れするのは年のせいですか?
年齢のせいと感じる方は少なくありませんが、歩いたときや階段・坂道での息切れの背景には、COPDや間質性肺炎、心不全、貧血などが隠れていることもあります。以前より軽い動作で息切れするようになった場合は、年齢のせいと決めつけず、医療機関で原因を確認しましょう。
息切れは放置しても大丈夫ですか?
息切れの原因や重さは人によって異なるため、放置してよいかどうかを症状だけで判断することはできません。国立循環器病研究センターは、息切れと足のむくみは心不全でよくみられる初期の症状であるとして、医療機関の受診をすすめています。息切れが続く・繰り返す、以前より強くなっている場合は、受診を検討しましょう。急な息切れや呼吸困難がある場合は、119番へ連絡してください。
受診前にメモしておくとよいことはありますか?
次のようなことをメモしておくと、診察のときに症状を正確に伝えやすくなります。
- いつごろから息切れがあるか
- どんな動作や状況で息切れするか(階段、横になったときなど)
- 一緒に出ている症状(動悸、胸の痛み、むくみ、咳・痰、発熱など)
- 喫煙歴
- 持病や、服用している薬
お薬手帳や、これまでの健康診断の結果があれば、あわせてお持ちください。
健康診断で異常がなかったのに息切れが続きます
健康診断で異常を指摘されていなくても、息切れが続く・以前より強くなっている場合は医療機関へ相談してください。健診結果があれば受診時に持参すると診察の参考になります。
まとめ
- 息切れは、心臓や肺の病気、貧血など、さまざまな原因で起こります。症状だけで病名を決めることはできません。
- 急な息切れ・呼吸困難、胸の締めつけが続く、胸や背中の突然の激しい痛み、意識がもうろうとしている、顔色が明らかに悪いといった場合は、119番へ連絡してください。
- 喘息の方で、発作時の吸入薬を何度か使っても改善しない場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- 以前より軽い動作で息切れする、横になると苦しい、むくみや咳を伴うなど、息切れが続く・繰り返す場合は受診を検討しましょう。
- 受診先に迷うときは内科へ。動悸・胸の痛み・むくみを伴う場合は循環器内科、咳・痰・喫煙歴がある場合は呼吸器内科が目安です。
